日本でトランプ騒ぎが起きたら

 トランプの移民強制送還を命じた大統領命令を阻止した全米自由人権協会、通称ACLUは今回の活躍で国際的な名声を高めたが彼らの業績は今に始まったことではない。この活動は、不法移民問題だけはなく、死刑問題、セクシャルマイノリティの問題について絶えず問題提起と啓発活動を行っており、今回の活動も多様な活動の一つに過ぎない。多くの米国民は、個々の問題について立場は違っても、大きな尊敬と経緯をこの団体に抱いていることは間違いがない。そして、この信頼が弁護士という抽象的な職業と司法にさらに力を与え、司法国家としてのアメリカを支えているのだ。

 今回の大統領命令は突然のことだったが、これに素早く対応したACLUの対応は、事前にこの動きを予測し、準備をしていた結果である。仮処分自体は書式に基づいて提出したようだが、単なる一個人のこれだけの「読み」と大規模の市民、弁護士らを動員できる資金力をもった団体は現在日本には存在しない。逆にいえば、今回のような事件が起きても日本は指をくわえてみているだけということになる。

 できるとすれば個々の弁護団を組んでの活動しかない。このような活動は私も参加しているし、有意義なものだと思うけれど、どうしても活動の規模と影響力に限界がある。やはりACLUのような政府の援助に頼らない強力で安定的な資金源をもったNGOの存在が必要だ。残念ながら今の日本ではこういう活動に寄付をする社会的な認識がないが、アメリカの名だたる企業から援助を受けて日本で類似の活動を始めれば、このような風潮に風穴を開けることができるだろうか?